相談内容
ご依頼者のお母様の相続でした。相続人は、ご依頼者とそのご兄弟・ご姉妹が全部で7名いました。うち1名と敵対関係にありましたが、他の相続人との関係は良好でした。
相続人はみな高齢で、かつ、海外在住の方もいらっしゃったりしたため、話し合いをてきぱきと進めることは難しい状況でした。
また、遺産の中に、ご依頼者が自宅として使用している土地建物があり、ご依頼者は土地建物を単独で相続したいという希望がありました。もっとも遺産は土地建物のみで、現金や預金はといった金融資産はなく、ご依頼者自身も金銭的な余裕はありませんでした。そのため、他の相続人にどのような形で納得してもらうかという点が悩みどころでした。
結果
相続分を譲渡してもらった結果、遺産分割の当事者がご依頼者ともう1名の相続人の2名のみとなりました。1名のみを相手に遺産分割協議・調停をすれば良くなり、手続きがスムーズに進みました。
また、ご依頼者が土地建物を単独で相続するための対価として他の相続人に対して支払うべき金銭(代償金)も、1名分の相続分(7分の1)に相当する金額で済むということを法的に確定した状態で、遺産分割に臨むことができました。
活動内容
ご依頼者と良好な関係にある法定相続人の意向がポイントでした。ご依頼者の話によれば、全面的にご依頼者に協力してくれるようでした。他方で、高齢であるため万が一遺産分割協議の途中で亡くなってしまった場合、その方の相続人が当事者になりますが、同じように協力的であるかは不透明です。そこで、協力的な相続人の持つ相続分をご依頼者に譲渡してもらう内容の合意をし、協力的な相続人全員の相続分をご依頼者の下に集約するための活動を、敵対関係にある相続人との交渉に先行して行いました。
コメント
相続に関わりたくない方、相続権を主張する意思がない方は、相続分を譲渡することにより、相続のもめ事やいざこざから離れることができます。逆に、遺産分割においてできるだけ多い割合の相続権を主張したい方は、他の相続人から相続分を譲り受けることで、自らの相続分を増やすことができます。今回はこの「相続分の譲渡」という制度を適切に利用することにより、ご依頼者は、自宅として使用していた遺産を単独で取得でき、かつ、取得するために他の相続人に支払うべき対価を最低限で済ませることができました。他の相続人から相続分を譲渡してもらうためには、その相続人との合意が必要です。そのため相続の開始前から良い関係性を築いておくことが不可欠です。