【解説】寄与分 

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寄与分とは

 被相続人の財産の維持や増加に特別に貢献した相続人が、法定相続分に加えて、その貢献度に応じた財産を多く相続できる制度(民法904条の2)です。

寄与分が認められる場合とは

 寄与分が認められるためには、被相続人の財産の維持や増加に貢献した行為が必要です。例えば、被相続人の家業を手伝ったり、介護をしたり、財産を管理したりする行為が挙げられます。

そして、その貢献の程度は、単なる同居や日常生活の世話ではなく、通常期待される以上の「特別の寄与」が必要です。

寄与分を主張できる立場

 寄与分は、相続人にのみ認められる権利です。

 相続人以外の人(例えば、被相続人の息子の配偶者など)が貢献行為をしていても、基本的には、寄与分としては認められません(「特別寄与」制度(民法1050条)については別の記事でご説明します。)。

寄与分が認められるための具体的な要件

特別の寄与があったというためには、

・対価を全く又はほとんど受け取っていないこと

・被相続人と相続人との関係性からみて通常期待される程度を超える貢献行為であること

・その貢献行為に専念していたこと(片手間ではないこと)

・その貢献行為を長期間継続していたこと

などが、一般的な考慮要素となります。

寄与分の計算方法

 例えば、相続人のうち一名が被相続人(要介護4)を療養介護していた場合、その相続人の寄与分は、

 要介護度4の要介護者に対する職業的付添人(ヘルパーや看護師など)の日当額(単価)×看護日数×裁量的割合

により計算することが一般的です。

 もっとも、職業的付添人の日当額(単価)は被相続人の居住地域によって金額が異なりますし、看護日数のカウントの仕方についても被相続人が利用していた介護保険サービスの内容や日数により変動します。裁量的割合についても、相続人と被相続人との身分関係、被相続人の状態、専従性の程度によって変動があります。

 具体的に主張できる寄与分額を計算したい場合には、弁護士との法律相談にて詳しい話をする必要があるでしょう。

寄与分を考慮した相続分の計算方法

 具体的に寄与分の金額が定まった場合、それを具体的相続分に反映させます。

 例えば、被相続人は母、相続人は子ABの2名、遺産総額5000万円のケースで、Bの寄与分として1500万円が認めらるとします。この場合、

 ・Aの具体的相続分は、(5000万円ー1500万円)×2分の1=1750万円

 ・Bの具体的相続分は、(5000万円ー1500万円)×2分の1+1500万円=3250万円

となります。すなわち、Bの方がAより、1500万円分多く、遺産を取得します。

寄与分の主張方法

まずは、相続人間での話し合いで認めてもらう、というのが建て付けです。

遺産分割協議の場で、他の相続人に対して自分の貢献を明確に伝え、寄与分を請求する意思表示をする必要があります。

もっとも、寄与分の成否や金額を判断することは難しいです。

寄与分を主張する方としてはどの程度を主張するのが妥当であるのか判断し難いですし、主張された方としてもどの程度まで認めるべきであるのか判断し難いです。加えて、「寄与分」が話題になる場面では、話し合いの当事者間に信頼関係が築けていない場合も多いです。結果として、話し合いがまとまることはあまり期待できません。

話し合いで合意に至らない場合は、家庭裁判所での調停や審判で決定することになります。

また、寄与分を主張しても他の相続人がその主張に納得しない場合に備えて、自分の貢献を証明できる証拠を準備しておくことが重要です。例えば、介護をしていたことを示す領収書や看護記録などが考えられます。

まとめ

 寄与分の主張は、相続人間で事実関係の争いになるなど、相続に関する紛争につながる可能性があります。紛争になると、寄与分だけの問題に留まらず、預金の使途不明出金の問題など異なる争点が発生し、紛争が泥沼化するおそれもあります。

 寄与分を主張したい場合や、寄与分を主張された場合についての対応は、弁護士に相談することをおすすめします。

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